お菓子がないと生きられないあなたへ
    喜田家&花畑洋菓子のお店ハルエ・グレースから 主人 田口恵美子がお届けします。
Vol11 キタヤ&ハルエグレースから「ちゅうりっぷ通信」

 ニュースレターがちょっ―と遅れまして、もう立冬の候となりました。お元気でお過ごしでしょうか? いつもいつも喜田家のお菓子をご愛顧下さり誠にありがとうございます。
 10月の中半にお菓子の研究で、ちょっと北海道に行ってきましたら、『えっ―、10月の中半でしょ! 紅葉の山々。ここは京都じゃないけど――?』と、違和感を感じるほど山々は紅葉真っ盛りでした。だんだんと南下してくる紅葉は、本州では『そうだ!京都いこう』の今なのですね。

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【教育はすべてに優先される】

 先日、2歳の孫のお守りを頼まれて荒川遊園地に行きました。ところが、なんと休園日!!。でも、かえってお金を使わずにお砂場とジャングルジムで4時間も過ごせてラッキーでした。
 その孫との人間づきあいの中で思ったのですが、例えばこうして1人の男の子の成長のなかで、1日1日の過ごし方接し方でその子供がどのように心が満たされるのだろうか・・・と。今日は自分1人の遊び相手のおばあちゃんがお守りをしてくれている。おばあちゃんと互角に向かい合って、心から満足しているニコニコな幼子の笑顔。ころんだり、泣いたり、笑ったり。シャボン玉の石けんをのみ込んで学習したり。これは子育て中のママでは観察するという視点より、義務感でやっているでしょうから・・・(だから孫はなんて可愛いんだろう)などと・・・。
 大切な人間形成の基となる1才〜12才位までの時期に、なまじの子育てでは相ならん。真剣勝負でやらなければ・・・。教育者とは、その両親、地域部会の大人たち、学校、幼稚園、すべてのとりまく環境は...と。ハイッ、考えてしまいました。

 ちょうどその日の夕方、テレビで金沢の小学校(4年生のクラス)の2年間の出来事を放送しておりました。55才位の学級担任の金森先生が、もう日々真剣勝負で38人の子供達に日々起きる様々な家庭での出来事を、その子の成長にどのように教育という観点で見守ってかかわっていくかという内容でした。転勤で転校する子供に対する友情の示し方。子供たちは詩をつくり、やがてメロディーを考え、手記を書いておくりだす過程。クラスのいじめっ子を、みんないじめているのにしらんふりをする。そして1人ずつホームルームや給食やすべての時間、ずっーと1人1人考えさせて、子供たちに自分の卑怯さを気付かせるまでの日々の葛藤。急にお父さんを失ってしまった男の子に、みんなは何が出来るか、「励ましてやれ」と一言先生はヒントをいい、3〜4人の男子生徒は考えて、自分たちにとって1ヶ月分位の小遣いで駄菓子を買って見舞いに行き、その後ホームルームでまとまり天国のお父さんへ「○○君のことは、オレ達が付いているから心配しないでね」と、天国からみえるよう運動場に1人1文字ずつ1m四方に書いて、終了式の日に全員で空に向かって大きな声で「天国のお父さんへの手紙」を伝える。
 そういうところまで、みんな気付くまで金森先生という1人の大人がひっぱていく。
 又、みんなでつくったいかだをプールで浮かべる日がやってきたとき、1人どうしてもおしゃべりばかりして先生のお話を聞いていない子に、先生が「おまえは今日はもうのるな」と前に出させて叱るんですね。教室はシーンと静まり返って、暫くすると1人の子が、又次の子がそして次々と『先生、いかだは○○君もみんなとつくったんだから、おしゃべりしていたことは悪いけど許してやってほしい』『仲間1人でものれないのなら、僕たちものらない。それは悲しいけど、でもその子を残してはのれない』というんですね。もう先生とホームルーム全員で真剣です。先生はみんなの友達を思う心にようやくニコッと『負けた。よし。OK』というんですね。
 まだ10歳の4年生で、ここまで人間がすでに成長しているかと驚きです。殆どもう10才くらいまでに人間の人格の基本形成(他人を尊敬するとか、思いやりとかの心の成長)は、こういう問題の中で育まれていくのかと、今の私の年でこそ余裕をもってテレビを見てしまいましたけれど、深く考えさせられると同時に感動し、又テレビの内容に驚いたのです。
 いい加減にここまで育てれられちゃうのと、ひとつひとつ事にぶつかるときに見過ごさないで、どう考えなければいけないかと、時間をかけて子供たちから答えがみつかるまで、金森先生は真剣勝負なんですね。
 金森先生は、「人と人とのつながり」ということを教えたかったのだということですが、私は金八先生という有名なドラマをしっかり見たことはありませんが、自信を持って熱くなっている先生達が各地にいらっしゃる。こんなにご苦労されているんだ!と...。これが教育なのだ・・・と。心ある先生方、ひるまずしっかり頑張って!、と応援したいものです。最近おこる子供たちの悲しい事件は、ここのところにあるのだな、と具体的にわかりましたね。ハイ。

 同じ日の深夜のチャンネルでも、フィンランドの教育事例を放送していました。教育委員会からのお仕着せや、過去の悪い慣習・仕組みなどを廃止して、先生たちが自由討論や仲間と研究しあって教育を想像していく。そうすれば、責任をもって熱情をもって本当の人間の魂で子供たちとぶつかって、心の教育が出来るからという事でしたが、まことに企業も学校も、まさに『教育はすべてに優先される』ということで、私も心に深く反省しております、ハイ。スンマセン。何ですか、可愛い孫の話が大きな話になってしまい、大変失礼致しました。


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【お菓子屋にとっての茶道】

 ところで、私ごときは何業かと申しますと、菓子屋業を営ませて頂いて、世の中の皆様にお菓子という幸せなものを通じて、皆様とこうしてご縁を持たせていただいているわけですが、まだ本業のお菓子について深く悟ったことが「ない」ことに気が付きました。これから折々に、お菓子づくりよもやま話をお伝えしてまいりたいと思いますが・・・。
 まぁ・・・お菓子大好きな私は、20才の頃お茶のお稽古をしているお室の中で、80才位の先生に『何故あなたはそうせわしないのか』と叱られ、そのうちにサボッて今に至っております。お菓子と切っても切れぬご縁のある茶道の道ですが、私はお菓子づくりは結構詳しいつもりですが、茶道の方はきちんと身につけておりませんで、誠に浅学非才の私で、深くお詫びを申し上げ何卒お許し賜りたくぞんじます。私は駄目ですが、茶道を究めていらっしゃるお方が喜田家のお客様の中にも大勢いらっしゃって、その分大勢のお方がその道に詳しく、必要あらばお助け下さるでしょうと、皆様を頼りにさせて頂いております。

 そんな道に詳しい方のお一人からも、再々お声をかけてくださり、9月末にも『いつになったら、私の茶室に遊びに来るの。早くいらっしゃーい』と、お電話をいただきました。茶室をつくったので、早く遊びにいらっしゃいということです。もう8年も忙しくて遊びにいけずにそのままです。「それでは・・・そろそろ――お邪魔させて頂きますか――」となりました。
 お茶室は、あるところの山の中にありました。山はご自分の山です。旅館のように山の下斜面に散歩道をつくり、庭口には庭石を配し、東屋や池や木戸があります。表玄関には沙羅双樹の木が植えられ、石庭の飛石をきれいに並べられています。懐石料理をつくる専用の台所も別棟につくられ、茶室は小間と大広間の二つ、八畳程の納戸は茶道具だらけでした。それで月に2度位お友達を呼んでお茶事をするのだそうです。それが、その県の当たり前のことなのだそうです。
 その日の私は、座敷中を立ったままで忙しがっている見学者でしたので、あっちを開けこっちを開けと相変わらず落ち着きのない状態・・・。ご亭主はそんな私を毛嫌いもせず、まず小間でお濃を、広間で懐石、亭主のお薄をおだしし〜と、丁寧におもてなしをしてくれて、案内してくれました。、サッと出されたこの日のお茶菓子は、可愛い有平糖の飴でした。『あー、飴も使われるのよね――』と。
 私がこの町へ思い切って出かけた訳は、もうひとつありまして・・・。これほどお茶事が一般大衆の家庭に日常化しているこの県で、どのような和菓子屋さんでお茶人方はお菓子を探し求めておられるか、とことん研究してみたいと思ったのですね。
 おかげで、この日のスケジュールはとても大忙し。「では田口さん出発よ」となりまして、まず田舎の山の中ですから、「鮎!」。鮎を食べに12:30出発です。12:40に到着。大きな大きな豊かな川のほとりに町営の鮎屋さん。火曜日でしたがお客さんいっぱいでしたね。
 鮎の塩焼き、鮎のおさしみ、鮎ごはん
 鮎の魚でん、鮎のフライ、鮎の甘露煮
 お銚子1本
 というメニューで、「おいしかった!」です。昔懐かしい私の原風景なところです(私っておばけ煙突の育ちなんですが・・・?!?・・・)。

 「さぁ、田口さんのんびりしてられんよ。いくわよ――」と次の行動へ。私・・・「ハイ、ハイ、ハイ、ちょっとまって――ェ」。と、次々と連れて行ってくれたのは10軒位で、終了は18:30 チャンチャン。大変勉強になりました。ありがとう2人のお友達さま。

 というわけで、今月は亥の子餅を喜田家のお客様にもお出ししたくなりました(7頁参照) 。美しいというよりも、11月のお茶事は玄猪(げんちょ)ともいう年中行事の一つで、旧暦10月中の亥の日に餅をついて贈答するのですが、茶道ではこの日に炉開きをし、茶の湯の世界ではお正月みたいなものだとか。障子も夏の御簾から障子に取り替えられ、亥の子餅が使われるのですね。ウチの森山工場長が好物なお菓子のひとつです。
 糯米と赤小豆を半づきして作りますが、普段はお目にかかれない通人のお菓子ですが、私たちも頂くことに致しましょう。お店には、「炉開き」というお箱でご用意いたしておきますので、ご興味のあるお客様はお試し下さいませね。又、11月の茶席では、織部饅頭も必ず使われますので、それも少し。


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 これから毎月、私田口恵美子の友人が、ご自分のところで毎月楽しみの茶会を遊んでいらっしゃるので、そのままご本人のたのしみ手法をご紹介していきますので、皆様もお家で気分だけでもお楽しみいただけたら楽しいでしょうか?。その友人は永井君代さんとおっしゃいますが、『どうぞ喜田家のお茶室だと思ってひんぱんにお客様と大勢でバスを仕立ててお茶会を楽しみにきて下さい』とおっしゃて下さっていらっしゃいます。皆様いつかそういたしませんか?


         <永井君代の十一月のお茶事>表千家

 十一月は、茶人の正月で「開炉」「炉開き」といわれます。
 「口切り」の茶事茶会を催します。
 拙宅「雙樹庵」は、小間(三畳台目)と広間(表千家家元「松風楼」の写し)があり、四季折々の風趣を楽しむため、四時を通じて茶事を催しております。
 (十一月の茶会茶事)
・小間においては、リンとした緊張感と身のひきしまる空間を使います。
   掛軸  閑
   濃茶
   お菓子 織部じょうよ
   お花  つばき
・広間においては、遊び心をたっぷりとりいれ楽しんでおります。
   掛軸  喫茶云
   薄茶
   お菓子 吹き寄せ
   お花  万作 ほととぎす(時の花)
・懐石…材料の工夫とそのもてなしの二つの部分からなっていると思います。茶事の趣向に最もふさわしい・・四季それぞれの旬の材料を選び、その素材の持ち味を引き出すように調理する。

 11月は、ボージョレヌーボー  ワインの解禁の月であることから、酒の代わりに赤ワインをオールド・ノリタケのディキャンターとグラスを使い楽しみます。


 というわけで、茶道の道も千利休から今日まで受け継がれた表千家・裏千家、どちらも堂々とした歴史の重みに敬意を表しますね。そして、大切なお茶事の添え物には、懐石料理やお菓子が登場する訳ですが、お料理関係のお出入り業方は勝手口を常とし、お菓子業の方々はきちんと紋付袴に着替えて、風呂敷にお重箱を抱えて正面口から小間に上がるのだそうです。お菓子をつくる職人さん自身がデザインや材料のこと、今回のテーマについて、こと細かくご亭主とご相談をまとめるという、重要な役割のお菓子なのですね。知れば「ガッテン!納得」みたいに、私も菓子屋としてなんだかワクワクしてきましたよ。今頃、この年で・・・?。まぁ、日々ハッスル、精進していきたいと存じます(ハイッ)。


 そして、もうお一方 和菓子の喜田家を愛して下さって、やはりいつもお茶事を楽しんでいらっしゃるペンネーム「はんなり朝子」さんが、暫く『お菓子とお人とのおつきあい』みたいな楽しいコラムをつれづれ日誌して下さることになりましたので、これも楽しんでいきたいと思います。



          ≪はんなり朝子のお菓子つれづれ記≫

 「お茶席のお菓子たち」
 伝統文化のただよう職人さんの技を持っているお菓子屋さんでは、のれんをくぐると独特の感覚で、しっかり自己主張しているお菓子が、それぞれ語りかけてくれるようです。手間ひまかけて作られる季節感あふれるお菓子は、味や形が、長い年月の間に少しづつ現代的に変化しているように思えます。
 先日、老舗のお菓子屋さんでのお話
 「正午のお茶事に使うくずまんじゅうを作って下さい。」と注文したところ、「前日の夕方、取りに来て下さい。」と言われて伺いますと、「くずとあんの具合が、明日の正午頃に丁度ほどよくなるようにあわせてあります。」とおっしゃるご主人の職人の技とお心遣いに胸がジーンとなり、「これぞまさに和菓子のオートクチュール!!」と感激して、忘れられないお菓子となりました。
 江戸時代、京都では、古今和歌集など、文学から名前をつけられた上等なお菓子が、茶の湯の流行や参勤交代によって、日本全国へ広がり、それぞれの土地で美味しいお菓子が生まれました。このように、長い歴史の中で育まれたお菓子は、日本の四季の移ろいを繊細に表現されるようになり、季節を先取りした旬の味わいになりました。
 さて、今月(霜月)最初の亥(猪)の日は、お茶の世界では炉開きをします。ころころ生まれる猪の子にあやかり、子孫繁栄と火の用心を願って、炉開きのお菓子「亥の子餅」が生まれました。炉開きには八十八夜につんだお茶の葉を茶つぼにつめておき、暖かい日が恋しくなった頃に茶つぼの口を切るので「口切り」とも呼ばれます。銀杏や柿など晩秋の味覚もお菓子を色どります。
 豊かなスローフード お茶席のお菓子とお抹茶を自分流に食べたり飲んだりして、甘みと苦みがフワ〜と、とけ合って広がっていくのが、これまた至福の楽しみのひとつです。
 忙しい毎日の中、ふっと美味しいお菓子に足を止めて、五感を感じるひとときは、いかがでしょうか。
                    



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平成15年11月1日号
元気で生きる田口 恵美子より

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