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平成22年6月(水無月)のおついたち─『芝居小屋の千穐楽』

毎月1日とその前日限り、店頭にて販売

 6月にロンドンで歌舞伎が公演されるそうです。東京の歌舞伎座は、4月末に建て替えのため、しばし幕を下ろしました。千穐楽の日は、前夜からの本降りにもかかわらず、「さよなら公演」の当日券を求める列が長く続き、雨にぬれて黒光りする大屋根から<御禮本日千穐楽>の幕が名残を惜しむように垂れていました。
 現在の建物は60年前に再建された四代目で、面構えは劇場というより芝居小屋という風情です。戦火により七変化した東京ですが、歌舞伎座のある東銀座の一角だけには、こってりと「定員二千人の江戸」が残っていました。
 歌舞伎座は間口28メートルの大舞台です。演劇評論家の渡辺保氏によると、役者たちはこの寸法に合わせて芸の格を高めてきたそうです。
 「自分の家にいるような自由さがあるからこそ、非日常的な芝居へと飛躍する緊張感を持っていた」とは、名女形、六代目中村歌右衛門への賛辞。役者は「わが家」にいることの解放感と、歴代の名優たちに見守られる心地よさを口にしました。 「初役を務める時など、『どこかに宿っている先輩方が力を貸してくれるかもしれない』――そんな安心感に包まれる劇場でした」と坂東三津五郎さんも語っていたそうです。
 私はそれほど歌舞伎を見てきたわけではありせんが、お客様の中には、色々な想い出をお持ちの方もおいでかと思います。元 NHKアナウンサーの山川静夫さんは学生時代に歌舞伎にはまり、3階席から声をかけ続けたと、著書「大向こうの人々」(講談社刊)に書いています。「名優の名演技からいただく感動は何ものにも代えがたいご馳走でした」とか。
 役者の名演にお客様が酔い、常連の声が役者を育てもしたのですね。
 音羽屋なら「トワヤ!」「ターヤ!」というのがツウらしく、桟敷や花道、赤い提灯の一つ一つに、客席のざわめきがしみ込んでいたことでしょう。積もる時が育んだ場の力は奈落の底でしばしの幕間、3年間の眠りに入ります。

 NHKでも4月は歌舞伎番組を多くやっておりました。たまたま、目にしたのが「六歌仙容彩(すがたのいろどり)」。音楽は「義太夫、長唄、清元」で、舞踊の分類としては「変化物(へんげもの)」でした。
 薄学なもので、予備知識も何もないままに鑑賞し、「な~るほど」と楽しませていただきました。知ることこそ感動ですね。

 平安時代、才色兼備で知られる小野小町を口説こうとして、5人の歌人が言い寄り、次々と振られるという内容です。中村福助さんが小町を、坂東三津五郎さんが一人五役で、「僧正遍照(そうじょうへんじょう)」「在原業平(ありわらのなりひら)」「文屋康秀(ぶんやのやすひで)」「喜撰法師(きせんほうし)」「大伴黒主(おおとものくろぬし)」を演じておりました。

 「文屋」は、御所の一室で歌を考えている小町のところに、恋心を募らせた文屋康秀がやってきますが、官女たちにさえぎられるという内容です。この作品ではちょっと男っぽい官女たちが登場し、文屋とのやりとりがユーモラスです。
 3年後、どんな歌舞伎座が誕生するか楽しみですね。

 さて、今月のおついたちのお菓子です。鹿の子模様の風流な篭をみつけた途端、6月の花、紫陽花を思い、江戸の見せ物小屋でのお弁当篭にふさわしい気がして、このようなお菓子を考えてみました。
 変化六場のお菓子です。各々に歌舞伎の定式幕(三色の縦じま模様の幕)と歌舞伎を代表する隈取り(くまどり)、官女の赤袴(あかばかま)をイメージしました。

  1)僧正遍照と大伴黒主と在原業平の3人をまとめて、羊羹で歌舞伎の定式幕を、
  2)雪平(せっぺい)で「隈取り」を。
  3)文屋康秀(ぶんやのやすひで)は平安貴族の烏帽子(えぼし)に袴姿を“こなし”。
  4)文屋をたしなめる官女の赤袴も“こなし”で表現。
  5)喜撰法師は僧侶の編み笠をおまんじゅうで。

 紫陽花がよく似合う小野小町は御簾ならぬ、篭の蔭に姿を隠しているようです。今月もお元気で「おついたち」をお楽しみください。

元気で生きる 主人 田口 恵美子
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