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平成24年8月(葉月)のおついたち―「夕立や草葉を掴むむら雀」

毎月1日とその前日限り、店頭にて販売

「夕立(ゆうだち)や草葉(くさば)を掴む(つかむ)むら雀(すずめ)」与謝野蕪村

 立秋、つまり八月七日を過ぎた暑さを残暑と言います。「立秋」は、太陽の位置からすれば秋にさしかかりますが、実際にはまだ夏の暑さの頂点にあり、陽射しも強く熱い日がまだまだ続きます。夜になっても気温が下がらず寝苦しい夜が続きます。

 そして月遅れのいわゆる田舎のお盆も過ぎて、8月23日頃になると、二十四節気では
「処暑」といいます。処暑とは、暑さがやむという意味で、まだしばらくは暑いながらも、ようやく朝夕の風に涼しさを感じられるようになってきます。赤とんぼが街に降りてくる時期ですね。夕涼みと言えば浴衣を着せてもらって楽しんだ花火。わたくしは最近少なくなってしまった「すぼ手」の線香花火が大好きでした。火を点けてもらい、牡丹から松葉、柳、ちり菊に至る過程を瞬きも忘れて見つめたものでした。
 
 今月のおついたちは、関東では珍しい「玳瑁羹」(たいまいかん)をおつくりしてみました。蒸した大豆と麹とはったい粉(麦こがし)を混ぜて発酵させ、塩水につけて熟成させた「大徳寺納豆」を使った琥珀羹ですが、塩辛さと琥珀羹の甘さの調和がとれるよう大徳寺納豆を更に練って小粒にして散らしました。大徳寺納豆が自然に溶けだし、にじんだ黒点と琥珀羹の黄色が玳瑁(ウミガメ)の甲に似て見えるので、べっこう羹とも呼ばれます。よく冷やして食べると味が一層引き立ち、夏の滋養にもってこいのお菓子です。「花火」は、錬切り製で、夜空に開く華やかな火花を刷りこみで描きました。「金魚鉢」は可愛らしい羊羹の金魚を寒天よせにしました。郷帰りの楽しみは「ほたる狩り」。こしあんを清流を思わせる錦玉羹でくるみ、ちらちらと蛍を飛ばしています。最近は特に激しく局地的豪雨が多くなりましたが、日中ため込んだ地熱を洗い流してくれる「夕立ち」を、葛と砂糖を練って蒸しあげた葛焼きに、激しい雨足の筋をコテで焼き付けて表現しました。夏の終わりを感じさせる「あきあかね」は、夕焼け色の錬切りでおつくりしました。
 ほっとする気候までもうひと息、せめて涼しげな夏のお菓子で涼を呼んで、ご自愛の上お過ごしくださいませ。

元気で生きる 主人 田口 恵美子
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